タテイト珈琲店
初めてクライアント(店主)とお会いしたときのこと、今でもよく覚えています。
一枚のポストカードをそっと差し出してくれました。
それは、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」。
「喫茶店を始めたくて……内装のイメージはこの絵です」とだけお話され、あとはお任せ頂きました。
それから、この小さな珈琲店の計画が始まりました。
店内の床や壁、天井に使った素材は、建築の世界では“下地材”と呼ばれるものたち。
普段は仕上げ材の下に隠れてしまう、少し荒々しく、でもどこか素朴であたたかい素材ばかりです。
その「下地」がそのまま表に現れることで、どこか静かで芯のある空間が生まれました。
一杯の珈琲を、毎日丁寧に注ぐ店主へ。
そして、あの一枚の絵に込められた思いへ。
この空間は、私たちからの小さな応答です。
0コメント