宝殿の家
この家は、大工職人とその家族4人が暮らすための住まいです。
ご家族からは中庭が欲しいという強いご要望がありましたが、必要なスペースや建物のボリュームを考えると、実現は難しいことが分かりました。そこで、母屋と事務所を別棟にすることで生まれる空間(隙間)を、あたかも中庭のように活用できるのではないかと考えました。
その結果、母屋と仕事場の間には、通路でもなく、ただの隙間でもない、少し不思議な「間庭」が生まれました。この間庭には、将来的に母屋の床レベルに合わせてデッキが施工される予定で、リビングの延長のような空間として、また建物へのアプローチとして使われることになります。さらに、仕事場と居住空間をうまく繋げる緩衝地帯としても機能することでしょう。
竣工から3年が経ち、クライアント様の監理のもとで植栽工事が少しずつ進んでいます。間庭に計画されているデッキも、これからゆっくりと形を整えていく予定です。住まい手によって変化し続ける、その“完成のない感じ”がとても魅力的だと思います。
建物は、使う人が手を入れ、時と共に変化していくことで、さらに魅力を増していくものだと感じます。だからこそ、その余白を設計することもとても大切だと思っています。
写真:富山 真志 場所:兵庫県高砂市
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